森嶋通夫先生と言えば、20世紀を代表する数理経済学者の一人です。残念ながら2004年7月に逝去なさっていますが、同じく20世紀を代表する数理経済学者の一人である根岸隆先生が森嶋先生の追悼論文――“Michio Morishima and history: an obituary”――をお書きになっていて(ネットで全文が読めます)、その中で次のようなエピソードを紹介なさっています。森嶋先生は、自身の研究成果を学術論文にするよりも本のかたちで出版するのを通例にしていたそうですが、その理由は「現今の学術誌では、極めてテクニカルな内容が求められていて、深みのあるテーマ(アイデア)を扱うのは奨励されていない。テーマは狭くてもテクニカルな内容の論文の方が受理される可能性が間違いなく高い」とお考えになっていたかららしいです。
そう言えば、タイラー・コーエンさんも同じようなことを語っていましたね(pdf;pp. 53)。学術誌では、既存の分野に対する「ちょっとした付け足し」を行う論文が受理されがちで、大論争を巻き起こしたり新しい分野を生むきっかけになるような「大きなテーマ(アイデア)」を論じにくくなっている。自分としてはどちらかというと「大きなテーマ」を扱う方に興味があるので、学術論文ではなく本を書くのに注力するようにしている・・・ってことらしいです。
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